海外一人旅。
字面を見ただけでも、何とも強そうなこの言葉に僕はずっと憧れ、とらわれていた。
世の中には、
海外一人旅で人生が変わった!
とか
根暗だった私が、海外の人の陽気な性格に触れることで、明るくなった!
だとか、
ウソみたいなくらい大きな変化を述べるブログ記事だったり、YouTubeの動画があったりする。
でも頭ごなしに、「んなわけないじゃん。」って突っ込ませないような独特の威厳というか、すごみみたいなのが、海外一人旅には含まれている気がする。
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高校生くらいのときから、どんな形であれ、海外に旅立つような、そんなアクティブな人間になりたいなあと思いながら、教室の隅で友人と戯れる日々を過ごしていた。
目立つわけでも、目立たないわけでもない、まあちょうど中間くらいの立ち位置だったと思う。
そんな僕だから「将来は世界を股にかけて活躍したいぜ、ふっはっはー。」なんて言うわけもなく、自分の思いに戸をかけ、カギをかけ、で過ごしていた。
そんな自分とは対照的に、アクティブでみんなでわちゃわちゃ出来るような友達とかを見ていつもすごいし羨ましいななんていうふうに思っていた。
なにより、どうしても物事のネガティブな側面から考えちゃう僕からすれば、こういう底抜けの明るさというか、何とかなるっしょ!精神は欲しくって欲しくって仕方がないものだった。
この、底抜けの明るさと何とかなるっしょ精神の渇望、そして「世界を股にかけるぞ、ふっはっはー」の組み合わせが、海外一人旅をどんどん神格化させる要因になるのであった。
ジョーブログのヨーロッパとか南米の横断シリーズとかを食い入るように見ていた時は、バックパックで世界を廻れば本当に自分自身を大きく変えられるのでは?とか思ってた。
それくらいには、海外一人旅に対する期待値が大きかった。
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浪人を経て、大学生になってからは、コロナの影響で最初の2年間はまともに旅行にすらいけない日々が続いた。
このコロナ期間が良かったとか悪かったとかは色々あると思うけど、海外旅行に行くことに関して言えば、十分に資金を蓄えられたという点において非常に良かった。
サークル・部活をしていなかった分、アルバイトには精を出していて、毎年100万近く稼いでいた。
お金のかかる趣味があるわけでもなく、お金が減るのは友人とご飯に行く時くらい。
大学2年生で一人暮らしを始めてからは、日々の生活費やら光熱費やらで支出は増えたけれども、手元には100万近くの貯金が残っていた。
コロナも徐々に収まってきた、2022年。気づいたら3年生。
ついに数年間胸にしまっていた、海外一人旅への思いを開き、実現させようと決意した。
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2022年8月。いよいよ海外への一人旅を敢行することとなる。
大きな期待と、この旅での出会いや思い出を想像しながら、成田国際空港へ向かい、飛行機に乗り込んだことは今でも覚えている。
現地では約2週間半、18日間ほど過ごしながら6カ国8都市を廻った。
美しい景色や建物。優しい人々と美味しいご飯。
全ての経験が身体中に沁み渡った。チープな言葉にはなるが、何にも変えられない、貴重な思い出を作ることができたと思っている。
ただこの旅で得たこのような物質的な感動よりも、今自分に周りに知り合いは誰もいない!という環境が僕にとっては最高に心地よかった。
日本にいる時は、何をするにも周りの目が気になっていたし、するかしないかの2択に迫られれば、無意識に消極的な行動を繰り返していた。
そんな僕が、海外にいる時は、本当に開放感に溢れていていた。
レストランで隣の人に話しかけて仲良くなったり、観光名所で仲良くなった人と一緒に市内散策したり。
このときの僕には、2択はなかった。思い立ったら体が動いた。
こういった自分の側面には驚いたし、自分の中で押し潰されていたアクティブな感情を余すことなく全面に出していったようだった。
というか、あったんだこんな感情が。
そんな経験を胸にしまって、名残惜しくも僕の初めての海外旅行は幕を閉じた。
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帰国後の僕だが、残念ながら大きく変わることはなかった。
今だって人前で話す時は緊張するし、アクティブに色んな人に絡みにいけるようになったわけでもない。
正直自分の中で海外一人旅を神格化しすぎていた節はある。
だから帰国後、数週間は正直
海外一人旅を経ても何も変わらんかったㅠㅠㅠ
と若干鬱になることもあった。これは事実。
ただ今になって思えば、この現実に気づけたことこそが大きな財産だと気付いた。
海外に一人で行ったくらいじゃ自分の性格なんて変わらない。
もし人生がひっくり返るような海外一人旅をしたというならば、それは変わったんじゃない。
帰国後の自分が、意図的に変えたんだ。(本人は無意識と言うかもしれないけど。)
そして僕は変わらなかったし、変えれなかった。
文字通り、本当に地球を一周するくらい遠回りをして、ようやくこのことに気が付いた。
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そんなことを考えながら、改めて自分の思想を振り返ってみた。
自分はいつも、周りのモノが自分を変えてくれると信じて、いや、そう信じこむことで至らない今の自分から逃げ続けてきた。
大学生になったら。大人になったら。○○すれば…。きっと〇〇だったら。
もちろん口には出さないけど、こんなことを自分の心でつぶやいてしまう。
出来ないのは自分のせいじゃない、環境のせいだ。
僕は砂糖のように甘い、こんな考えに溺れ続け、時にはこの甘い思いに対して苦虫を噛み潰したような顔をして苦しがっていた。
情けない、変わらなければ。
もちろん簡単なことじゃない。けど、自分の意識を少しずつ、理想の方向に変えていきたい。
受け身の自分じゃなくて、主体的な自分の力で。
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色々書いたけど、答えはシンプル。
海外一人旅なんかで人生も性格も変わらない。
みんな自分を変えたんだ。
そしていつかは変われると思い続けた、外的要因に期待し続ける自分とも、もうおさらばせねば。
今日も明日も全力で。少しずつ、でも自分の意志で。
自分のなりたい自分に慣れるように、頑張っていきたい。